精神分析の理論では、「嫌なことを考えない」とか、「嫌な出来事を思い出さない」という心の動きを、「抑圧(ある特定の思考や感情を意識から追いやって、無意識の領域に閉じ込める)」という。
抑圧には「否認や否定をする」とか、「排除や抑制をする」とか、他にも様々なものがあるけど、面倒くさいので「抑圧」という言葉でひとくくりにする。
「抑圧」によって「嫌なことを考えない」とか「嫌なことを思い出さない」と言うのは、「忘却(時間経過と共に忘れ去る)」とは全く意味が異なる。
「忘却」の場合は、ある意味「その本体(嫌な記憶)が消えてしまう」けど、「抑圧」の場合は、「その本体(嫌な記憶)」が消えてしまうわけではない。
「嫌な記憶を抑圧する」と言うのは、意識の部分から、心の別の無意識と言う部分に「それ」が移っただけ。
意識が「スポットライトを浴びたステージ」だとすると、無意識は「舞台裏」と言える。
「舞台裏」はスポットライトを浴びることはないが、常に「表のステージ」を支えている。
人間の意識(思考と感情)は、無意識の影響を排除することは出来ない。
「嫌な記憶」を「抑圧」しても、無意識の領域で佇む「それ」が、常に意識に影響を与え続けている。
故に、「嫌なことを考えない」というのは、不可能であるという結論に至った…今日この頃です。
これは私独自の臨床心理学的な結論だけど、脳科学的にも、同様の結論になると思う。
だって、「嫌なこと」って、言ってみれば「気になること」でしょ。
人間の脳は「気になること」を放っておくことは出来ないからね。
と、言うことで、「嫌なことを考えない」とういのは不可能なんだけど、でもね、じゃあ、「どうすれば良いの?」ってことだよね。
「嫌なことを考えている」と、ストレスで心が潰されそうになる。
でも、「嫌なことを考えない」と言うのは、不可能…
それなら、そのままストレスで心が潰されるのを待つしかないのか?
いや、そうではない。
嫌なことから目を背けずに、ありのまま、「それ」を受け止めることで、ストレスを吹き飛ばすことも可能だと思う。
その方法こそが…「マインドフルネス」だ。
マインドフルネスで一番重要なのは、自分の思考や感情をありのまま受け止めて理解すること。
多くの人が自分の思考や感情を整理する事が苦手なのは、「抑圧」によって、「向き合うべき思考や感情」を無意識の領域に閉じ込めてしまうから。
「無意識の領域に閉じ込められた思考や感情」は「嫌なこと」として、心の奥に佇み、そして、ネガティブな影響を意識に及ぼす。
だけど、人は、無意識の領域に佇む「嫌な記憶」から、ネガティブな影響を受け取っている事を自覚する事が出来ず、その結果、思考や感情がグチャグチャになってしまって、心を整える事が出来ない。
マインドフルネスの第一歩は、「嫌な出来事」に直面した時、「抑圧」や「逃避」をするのではなく、ありのまま受け止めて理解をすること。
嫌な出来事に直面した時、自分の頭や心に浮かんで来た言葉を、そのままストレートに表現する。
声に出しても良いし、ノートに書いても良い。
嫌なこと(苦しみや悲しみ、不安や恐怖、苛立ちや怒りの思考や感情)が湧き上がって来た時は、ゆっくりと、落ち着いて座って、呼吸に意識を集中させて、自分の気持ちを正直に表現する。
無理に思考や感情を変えようとしたり、認識や認知を修正しようとしないで、あるがままに自分の気持ちを観察して、それを表に出す。
ひとりでマインドフルネスを実践するのが不安な場合は、マインドフルネスのプログラムを行っているメンタルクリニックで、自分が信頼できる臨床心理士のカウンセリングを受けてみるのもオススメです。
臨床心理士は、「いまどのように心で感じていますか?」といったシンプルな問いを投げかけることはあるけど、あなたの言葉を評価したり、あなたの考え方を強引に修正することはありません。
必ず、臨床心理士はあなたのこと、ありのまま受け入れてくれます。
マインドフルネスの最初は、感情を激しく揺さぶられる時間になるかも知れない。
でも、次第に、自分の感情について何も取り繕ったりせずに、ありのまま率直に語ることで、その感情の土台にあるエネルギーを活用して、新しい行動を起こせるようになる。
過去の後悔や現在の息苦しさから、希望(未来の可能性)に、心の焦点を移しやすくなる。
希望(未来の可能性)に心の焦点が移ると、自分自身が解放感を味わえ、今の不安や恐怖の感情が弱まって来る。
今の自分の感情を、ありのまま見つめて、受け入れて、言葉で表現するのは、「怖い」かも知れない。
でも、必ず、その先には…
希望(にっこりと微笑む、素敵な笑顔)が待っている。
いつの日か、私が、どこかのメンタルクリニックで臨床心理士として働いているとき、マインドフルネスのプログラムの中で、にっこりと微笑む、笑顔のあたなに出逢えたらいいなぁ♪
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