人生って、「まさか…」と言う事が、突然起きてしまうもの。
「どうして、自分が心臓病に…」
納得できなかったよ。
何度も、何度も、心の中で叫んだ。
「どうして、こんな事になるんだ…」
医師の口から放たれる言葉(心臓病の宣告)は、鋭いナイフよりも深く、無慈悲な現実を胸に突き刺してきた。
心臓の悲鳴が唐突に問いかけて来る。
「死ぬのが怖い?」
そりゃ怖いよ。
怖いにきまってるよ。
みんなそうだよ。
死にたくないよ。
まだ、死にたくない。
逃げたい。
不安と恐怖から逃げたい。
でも逃げたら、そこで終わりだ。
死にたくないなら、どんなに怖くても手術を受けるしかない。
今日、麻酔科の手術前診察が無事に終わった。
予定通り、麻酔可能であると判断が下りた。
いよいよ入院して、そして、手術を受けるという運びになった。
これで、もう逃げられない。
でも、やっぱり怖い。
ポジティブに現実を受け止めて、「行くぞ!」と覚悟を決めたんだけど、それでも、やっぱり怖いよ。
たまらなく怖い。
入院オリエンテーションのとき、インフォームド・コンセントがあって、改めて麻酔と手術の詳しい内容、手術後の回復室での過ごし方や、入院期間の見通し、手術後の後遺症のリスクなどについて説明を受けた。
迫りくる恐怖。
怖くて、怖くて、頭がおかしくなりそうだった。
この手術で、もしかしたら死ぬかもしれないという恐怖。
全身麻酔により、一時的に意識が消失したり呼吸がとまって、自己を支配する事が出来なくなる恐怖
全身麻酔をかけても、手術の途中で、うっすらと目覚める事があるのではないかという恐怖。
身体を傷つけられる恐怖。
手術が失敗して、後遺症を患うかもしれないという恐怖。
迫りくる恐怖が、たくさんあり過ぎる。
それ以外にも、自分の身体と命を全面的に医療チーム(他人)にゆだねなければならない事への懸念。
慣れた自分の家ではなく、病院という環境で時間を過ごさなくてはいけない不安。
抱えきれないぐらいの不安と恐怖。
まるで小さい子供のように脅えている私を、傍で支えてくれたのがベリーショートの彼女だった。
家族でもないのに、付き合っている恋人でもないのに、彼女は仕事を犠牲にして、病院まで付き添ってくれた。
入院オリエンテーションとインフォームド・コンセントのとき、不安と恐怖で頭の中が真っ白になっていた私のことを、彼女がフォローしてくれて、応対もしてくれて、後で入院ノートを見せてくれた。
彼女は積極的に、医師や看護師、薬剤師とコミュニケーションをとって、麻酔や手術のこと、手術後の治療や薬のこと、入院生活に関することを、丁寧にノートにまとめてくれていた。
彼女が、ここまで自分に寄り添ってくれるなんて、想像もしていなかった。
入院オリエンテーションとインフォームド・コンセントには、父親も同席してくれた。
だけど、正直なところ、ベリーショートの彼女がいてくれるなら、父親は不在でも構わなかった。
仕事を休んで病院まで来てくれたこと、同意書の家族欄の署名と、最低限のお金を出してくれたことには感謝している。
だけど、ずっと冷たい表情で、気遣う言葉、何ひとつ掛けようとしない父親。
もう、どでもいい。
ベリーショートの彼女がいてくれたら、それでいい。
でも、そんな父親だけど、ベリーショートの彼女が私を気遣ってくれている様子を見て、彼女に、一言お礼を言っていた。
それだけは安心した。
「今付き合っている彼女なのか?」
彼女がいない所で、父親からそう聞かれた。
「彼女のことは、手術が終わって、退院した後にお話しをします」
自分なりに父親を気遣った返事をした。
本音を言うと、父親には自分のプライベートについて、話したくはない。
そんな事よりも、なんていうか、ベリーショートの彼女が、まるで自分にとってお姉さんのような存在になってしまった。
不安と恐怖に脅えている自分にとって、彼女の存在が、とっても頼もしく見えた。
彼女は、自分より若いし、体格だって、圧倒的に自分より小さい。
なのに、なぜか、彼女のことが大きく見えた。
そして、今まで経験をした事がないような愛しさを、彼女に感じた。
縋りつきたいと、思った。
抱きしめてほしいと、思った。
不安と恐怖で潰されそうだから、抱きしめて欲しかった。
「抱きしめてほしい」
まさかね…年下の彼女に、そんな事は言えない。
言えるわけない。
だけど、手術日の朝には、もしかしたら…。
迫りくる恐怖に耐えられなくなって、言うかも知れない。
病院の付き添いが、優しい言葉ひとつも掛けようとしない父親だけだったら、自分の精神はどうなっていたかな。
いつも、元気な笑顔で励ましてくれる彼女の存在がなかったら、自分の心は、一体どうなっていたのだろうか…?
彼女は、私が不安と恐怖で脅えているときは、その感情にそっと寄り添ってくれて、頷いて共感してくれる。
そして、励ましてくれるときは、いつも、とびっきりの笑顔を浮かべてくれる。
学生時代にチアリーディングをやっていて、スポーツやプロレスが大好きな彼女。
優しくて、いつも明るくて元気。
不安感や恐怖感、そして絶望感に潰されそうになったとき、何度も彼女の笑顔に救われた。
彼女は、死の恐怖という暗闇の中を突き進む勇気をくれた。
彼女の笑顔につられて、一時的に不安と恐怖を忘れて、自分も笑う事がある。
彼女は微笑みながら、明るく言葉を掛けてくれる。
「笑顔が、未来を切り拓く!」
「絶対に大丈夫!」
迫りくる恐怖を吹き飛ばしてくれるのは、彼女の笑顔と言葉だ。
きっと乗り越えて行ける。
迫りくる不安と恐怖。
大丈夫だよね。
彼女が一緒にいてくれるのなら。
手術が成功して、無事に退院できたら、その時は彼女に…。
伝えたい。
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